2012年4月25日水曜日

「研究のアイデア」って何?


前回までのTipsにおいて,論文の記載仕方,提案書の記載の仕方に関して述べた.その時に一番のポイントとなっていたのがコアとなる「研究のアイデア」である.「研究のアイデア」とは,どのようなものであるか,と疑問に思われる読者の方も多いかと思い,今回のTipsでは,「研究のアイデア」に関して述べていきたい.「研究のアイデア」は,研究者(各専門家)の経験と感に依存する部分が多く,OJT(on the job training)で覚えてくものであると,私は思っている.そのため,言語化して記載できることには限界があることを,前もってご了承頂ければ幸いである.

私の所属している研究室は,一人1テーマ(一人の学生が1つの研究テーマを実施すること)で研究を実施しており,また,学生は機械工学分野に関わる医療福祉に関することであれば,自由に研究テーマを決めていいことになっている.このような制度の中で,初めに学生がやりがちな誤りは,「大きなシステムを開発すること」を,「研究のアイデア」にしようとしてしまうことである.

医療福祉ロボットを例とすると,新しいda Vinciや新しいHALの創造を自分の研究テーマにする,という意気込みである(皆様も自分の分野にある,最も新しいプロダクトレベルのシステムを思い浮かべてほしい).意気込みは非常に買いたいのではあるが,これは適切な「研究のアイデア」の設定の仕方とは言えない.なぜなら,da VinciやHALを作るためには,新しい技術のブレイクスルーが複数あるはずだからである.論文などでいう「研究のアイデア」とは,何か社会的なブレイクスルーを起こせる新しい「技術」である.例えば,da vinviで言えば,「ロボットアームのワイヤの取り回し方」,「マスタの構成が目→画面→手という順番になっていること」,「体内への刺入点が機構的に拘束されていること」などがあり,HALでいえば,「人間の体にフィットさせるための機構構成」,「生体信号から人間の意図を読み取る信号処理技術」などがある.

このように,論文でいう「研究のアイデア」というのは,システムレベルでどのように社会を変革できるかということではなく(これは論文では,Backgroundに記載すべき事項),技術としてどのようなシステムを構成する課題を解決できるか,ということになる.上記に記載したとおり,システムというのは様々な技術(研究のアイデア)から構成されており,組み合わせることでシステムとして完成させる(図).新しくない技術を組み合わせたのみの「合わせ技一本」的なシステム統合は,研究にはならない.システム統合的な論文を記載する場合は,統合したシステムだからこそできる新しい技術(アイデアの核)を提示する必要がある.

「研究のアイデア」=「何かの課題を解決する技術」であることは上記に述べたとおりである.最後に,いいアイデアの3つの条件を記載して,今回のTipsを終了する.

1. オリジナリティが高いこと
 → 新規性があることである.今までにない発想であればあるほど,いいアイデアといえる.

2. シンプルなアイデアであること
 → 複雑な推論を交えたアイデアの方がいいと思ってしまう方も多いと思うが,良い研究のアイデアは一言(1つのセンテンス)で表現できるくらい,シンプルなものが好ましい

3. 一般性が高いこと
 → アイデアは様々な場所で活用できる(これを一般性が高いと言う)ほうが好ましい.波及効果を生み出せるアイデアは,いいアイデアである



図 

参考書籍
[1] 素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術
http://www.amazon.co.jp/%E7%B4%A0%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E8%80%83%E3%81%88%E3%80%81%E7%8E%84%E4%BA%BA%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E5%AE%9F%E8%A1%8C%E3%81%99%E3%82%8B%E2%80%95%E5%95%8F%E9%A1%8C%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%82%BF%E6%8A%80%E8%A1%93-%E9%87%91%E5%87%BA-%E6%AD%A6%E9%9B%84/dp/456962457X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1334230676&sr=8-1


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